lgbt
LGBT
という言葉をご存知でしょうか。ここ半年ほどで急にメディアに取り上げられるようになったため、「見たことはあるけど」「聞いたことはあるなぁ」くらいの方も多いのではないでしょうか。かくいう私も、最近まで「同性愛者のことかな」くらいにしか思っていませんでした。しかし、とあるご縁から LGBT向けの結婚証明書発行やイベント企画、企業への啓蒙活動などを行われている on the Ground Project(オンザグラウンドプロジェクト)代表の市川武史さん のお話を伺う機会があり、認識を改めました。

実は今日も、オカビズ(岡崎ビジネスサポートセンター)で市川さんのセミナーがあり、参加してきました。そこで学んだことを共有させていただければと思います。ちなみに、市川さん自身がゲイであることをセミナー冒頭でおっしゃっていました。



そもそもLGBTって?

まずは、LGBTという言葉の意味から。

LGBTとは、



L=レズビアン

G=ゲイ

B=バイセクシュアル

T=トランスジェンダー



という4つの言葉の頭文字をとったもの。いわゆる「セクシュアル・マイノリティ(性的少数者)」のことです。でも、厳密に言うとこの LGBTの他にも、男性と女性の両方の特性を持って生まれてくるインターセックス(性分化疾患)と呼ばれる人たちや、好きになる対象を持たないアセクシャルと呼ばれる人たちがいるそうです。性別って男と女でパキッと分けられるものではなく、多様性があるものなんですね。Facebookの登録ページでは、なんと50通り以上(!)の性別からひとつを選べるようになっているそうですよ。

考え方としては、

・体の性別
・心の性別(自認している性別)
・恋愛対象となる性別

の組み合わせ。体が男で、自認している性別が女性で、恋愛対象が女性=トランスジェンダーのレズビアン、という具合です。

日本のLGBT人口は?

ここでひとつ、質問です。
日本にはいったい、LGBTの方が何人くらいいると思いますか?

「マイノリティ」というくらいだから相当少ないのでは…と思われるかもしれませんが、、、その数、なんと
900万人以上!「日本の人口の約7.6%がLGBT(電通総研調べ) 」と言われているそうです。この人数はだいたい、「神奈川県の人口」 「日本全国の小学生と中学生を足した数」、「左利きの人」と同じだそうですよ!13人に 1 人と言いますから、小中高大で同じクラスになったあの人が、同僚のあの人が、もしかしたらそうなのかもしれません。

「いやいや、自分の友達とか同僚にはおらんよ」

と思うかもしれませんが、ちょっと待ってください。左利きの人と同じ数だけいるとしたら、必ずと言っていいほど出逢っているはずなんです。でも、これまでLGBTの人に出逢っていないのは・・・そう、もしかしたら実は出逢っているのに気づいていない、当事者がなかなか言い出せずに隠すほかなかった、という可能性があるんです。

市川さんのお話を聞いていて、私もふと自分を顧(かえり)みました。自分は知らず知らずのうちに、ヤな思いをさせていたんじゃないかと…。市川さんいわく、「なんで結婚しないの?」と質問されたり、フツーに仲のいい男性社員たちに上司が「おまえたちホモか」などとジョークで言ったりするようなことがイヤで、「カミングアウトしたくないな」という気持ちになってしまっていたそうです。…みなさん、思い当たる節はありませんか。私は、あります。

注目のきっかけ


それではなぜ、ここ半年ほどでこれだけ
注目されるようになったのでしょうか。きっかけは、 2つ。ひとつは、今年の6月。 アメリカの連邦最高裁で『同性婚を認める』という歴史的判決が下されたこと。当時、その判決を受けてFacebook のアイコンをLGBTの多様性を表す「レインボーカラー」にしている方があふれたため、記憶に新しいと思います。この記事の写真がレインボーカラーのハートなのも、同じ理由です。もうひとつは、日本でも渋谷区で同性カップルに結婚に準じる関係を認める『パートナーシップ条例』が施行されたことです。この 11 5日から「パートナーシップ証明書」の発行を開始したことも、各種メディアで大きく取り上げられていました。また、渋谷区が「条例を遵守しない事業者を公表する」とし、ある生命保険会社が「パートナーシップ証明書があれば、生命保険の受取人になれる」という商品を発表したことで、「LGBT」というマーケットが強く意識されるようになったそうです。

企業がLGBTフレンドリーで得られる2つのメリット

企業が、「私たちはLGBTに理解があります」と意思表示をすることで得られるメリットは2つあると、市川さんはおっしゃっていました。ひとつは、「売上アップ」。もうひとつは、「優秀な人材の獲得」です。

まず、売上アップについて。
単純に、男性という市場、女性という市場とは別にもうひとつ、「LGBT」というほとんど手つかずの市場があると考えればわかりやすいでしょうか。従来の商品・サービスは、男性・女性というたった2つの性別を前提につくられているものがほとんどです。なので、人口のおよそ1割、数にして900万人と言われる LGBTの人が利用できる、利用しやすい商品・サービスにすることで、純粋な売上アップ につながるというわけです。また、LGBTを友人・知人に持つ人たちの目にもその企業が好意的に映るため、購買につながるといいます。

すでに大手携帯販売会社が「家族割」を
LGBTに適用していたり、大手ブライダル会社が同性婚カップルを対象とした挙式プランをつくったり、大手ホテルが宿泊プランを打ち出したりと、企業の LGBT戦略が少しずつ広がりを見せています。とはいえ、むずかしく考える必要はなく、 すでに自社にあるサービスや商品を、LGBTの人たちが使いやすくするにはどうすればいいか考え、 見直してみる。男と女を前提とするのではなく、そこにもうひとつの選択肢を加えるだけでいいと市川さんはおっしゃっていました。




ちなみにこれは、LGBTフレンドリーな企業のひとつ、「LUSH JAPAN 」さんがつくったせっけん。




販売名が、「愛する権利」となっているのが、粋ですよね。


そして、もうひとつのメリット、人材の獲得について。
市川さん自身の体験談として語ってくださっていたのですが、就職活動の際、ある企業の面接で話の流れからゲイであることをカミングアウトしたところ、そこで面接が打ち切られ、「お帰りください」という対応をされたそう。。。LGBTに寛容でない会社であることが事前にわかっていれば、市川さんも志望しなかったとおっしゃっていました。つまり、LGBTフレンドリーであるという意思表示をすることで、優秀なLGBTの方が集まる可能性があるということです。

ちなみに、LGBTの従業員を持つ会社の社長さんの話では、「LGBTの社員はそれまでの人生で内省したり、大変な思いをしてきているからこそ芯が強く、それでいて物腰がやわらかいのでコミュニケーション力に長けている」人が多いんだそうです。

また、LGBTフレンドリーであると意思表示をすることで、当事者以外の人材への訴求にもなるという考え方もできるようです。今や当たり前になった「ワークライフバランス」という言葉。少し前まではそれを標榜する会社が最先端をいっているようなイメージがあったように、それと同じことが「LGBTフレンドリー」にも起きると考えられているからです。今、水面下では業界に先んじてLGBTフレンドリーな会社になるという企業が増えているそうですよ。

LGBTフレンドリーの公表で
失敗しないための3つのステップ


とはいえ、いきなり「我が社はLGBTフレンドリーな企業です」と公表するのはリスクが大きいと市川さんはおっしゃっていました。実際、アメリカのある自動車メーカーが「LGBTフレンドリー」を訴えるCMを放映したものの、社内の制度なども整備されておらず、何より従業員の理解が深まっていなかったことから、「私たちの財布しか見ていなかったのか」とLGBTの方たちを落胆させてしまったケースがあるそうです。そんなリスクを回避するためにも、次の3つのステップを踏むことが大切とおっしゃっていました。

◆Step1 LGBTについて社内の理解者を得る…LGBTに関する知識を社員全員が持つ、当事者を把握する
◆Step2 社内の制度や福利厚生などを見直す…家族手当、更衣室、トイレなど
◆Step3 公表する

好評を急ぐのではなく、実際にLGBTのお客様が来られたとき、LGBTの社員を採用したときに備えて準備しておくことが大切とのこと。

LGBTに関する正しい知識を身に付け、社内の制度や規定を今一度見直し、LGBTフレンドリーであることを社内外へ意思表示していく。これからの時代、優秀な人材を獲得し、売上を伸ばしていくのは、このような時代の大きな流れを逃すことなく、いち早く取り組める企業なのかもしれません。

ほんなら、また。

コピーライター
松田 広宣